お笑い観覧記 ライブレポート

玉ライブにあのレジェンドが降臨!演者も観客もどんな話題が飛び出すのかに戦々恐々?のライブが開幕する!〜玉ライブvol.17・ライブレポート〜

(ライブレポートのため、出演者の敬称は省略させていただきます。ご了承ください。)

何が筆者をここまで引き付けるのだろうか?そんな思いを抱きつつ、2週連続でこの場所にやって来た。

そう、ここは、沖縄スタンダップコメディの聖地・カレー屋タケちゃん。極上のスパイスカレーと、極上のスタンダップコメディが堪能できるパワースポットだ。

今日は、あのレジェンドが出演すると聞き、どうしても観たい!と思って、先週の帰りに予約させてもらっていた。

その人物とは、沖縄で知らない人はいない、「お笑い米軍基地」の主宰、まーちゃんこと「小波津正光」だ。沖縄の重大な社会・政治問題を風刺したコントを作っている人物だけあり、今回もどのような内容の話が飛び出すのか、誰もが楽しみにしているに違いない。または、どのような話が飛び出してしまうのか、戦々恐々と(笑)している可能性もある。

これがライブの楽しみと言えるだろう。他では聞くことのできない、ギリギリを攻めた話が聞けるかもしれない。そんなワクワク感に満たされていた。

そんなワクワクが強すぎて、いつも早めに着いてしまう自分に苦笑しつつ、店内に入り席に着く。

時間の経過とともに、お客さんがカレー屋タケちゃんに集まってくる。常連さんも多く、沖縄でスタンダップコメディ人気の高さを知ることができる。その人気を押し上げているのが、この玉ライブではないかと筆者自身は考えているのだが、いかがだろうか?

談笑するお客さんの顔は、本当に楽しそうで、店内の雰囲気を和ませている。初めて来場する方も入りやすい、そんなウェルカムな雰囲気が嬉しい。スパイスカレーを頬張る姿も見られる。スタンダップコメディ人気だけでなく、カレー屋タケちゃんの提供するスパイスカレーも、玉ライブの魅力の一つだ。

お客さんに混じり、出演する芸人たちも続々と会場入りする。気さくに撮影に応じる芸人の姿に、会場の雰囲気の良さが現れている。

そして、ついにまーちゃんも会場入り!ひと際大きな拍手が巻き起こる。さすがはレジェンド、お客さんの期待値の大きさもうかがわれる中、飄々と控室へ向かう姿は、かっこよさを感じる。

開演時間が迫る。今回も多くのお客さんが集まり、店内は満席状態だ。玉ライブvol.17の幕が上がる。

オープニング

オープニングの前に、音のセッティングのために登場した玉代勢から、今日は撮影が入っていることが伝えられる。確かに2台の小さいカメラが据えつけられていた。

「撮影が入るので、後ろから撮りますので、皆さん、後頭部のコンディション大丈夫ですか?」

と、お客さんを軽くいじって場を和ませている(笑)。

「撮影が入っているということは、わかりますよね?いつも通り、盛り上がってる雰囲気でお願いしますね。盛り上がりが伝わることで、この玉ライブが存続していきますのでね」

畳み掛けるようにお客さんを笑わせて、場の空気をあたためていく玉代勢。そこは芸歴20年以上を誇る芸人、その話術はピカイチだ。

音の調整を終え、一度退がった玉代勢が再登場して、いよいよ玉ライブがスタートする。割れんばかりの大きな拍手の中を、いつもの素敵な笑顔で三線を手に再登場した玉代勢。そして、遅れているお客さんがいること、お客さんが来たときには、あたたかい拍手で迎えてほしいことを伝えた。そして、その際には、自分の登場と同じくらいの大きさの拍手はしないように注意を入れ、会場の笑いを誘った。

玉ライブvol.17の出番順は以下のとおり。

1.玉代勢直(オリオンリーグ)

2.瀬名波勇介(ゴリラコーポレーション)

3.りょうと(凸凹トラベリング)

4.たろう

5.まーちゃん

ここで、玉代勢はまーちゃん目当てで来た人がどれくらいいるかを尋ねる。パラパラと上がる手を見て「まーちゃんさん見に来るという方、多いんで…あれ?意外と…」と言葉を濁す(笑)。これには、会場から笑いが漏れる。

続いて、自分を見に来たという人がいるかを確認する玉代勢。しかし、まさかの「2人?」に、これまた会場が笑いに包まれた。

そして、「純粋にカレーを食べに来たという方は?」との問いに、大きな拍手で答えたお客さんたち(笑)。さすが、玉ライブに足を運ぶお客さんは、笑いのツボを押さえている。会場全体が熱を帯びたところで、玉代勢がトップバッターとして、オープニングの勢いそのままに玉ライブの口火を切った!

玉代勢直(オリオンリーグ)

芸人バスガイドとして活躍している玉代勢は、お気に入りの城(ぐすく)の話から入る。彼が推す城は「座喜味城」だ。

座喜味城は、琉球王国の英雄であり、名築城家としても名高い護佐丸(ごさまる)によって作られたとされている名城。玉代勢も説明していたが、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界遺産にも登録されている。

その魅力を面白おかしく語る玉代勢。座喜味城の知識はもちろん、その愛あふれる語り口にお客さんは引き込まれていく。特に、戦のために作られた城と言われる座喜味城の特徴的な通路(奥へ導かれるような通路で、最終的には行き止まりになっている)について熱弁ふるう。

何かありそうで、怪しすぎる通路に、わざわざ行くはずがないと考えているという玉代勢。そんな話の中に登場してきたのが、「オリオンリーグという会社があった場合、アルバイトとして雇っている」という(笑)相方の「剛くん」だ。

剛くんにこの話をしたところ、めちゃくちゃ喰いついてきたという。座喜味城についての知識もあり、色々と質問してくる剛くんの姿勢に嬉しくなった玉代勢は、「好きなんだ。詳しいんだ」と尋ねたところ…

「いや、全然知らないです」

気がつくと、自分が見事に座喜味城と同じ通路にハマっていたというオチ(笑)。これには会場が爆笑に包まれた。しっかりとフリが効き、そこからキレイに落とす感じが、筆者好み過ぎて手を叩いて笑ってしまった。

そこから相方である剛くんにまつわるアレコレを話した後、県内企業と県外の企業という話が展開される。県外の企業は採用など、良い面もあるが、県にお金を落とさないという経済的な話だ。難しそうな話になるのか?と思いきや、実は、そこがフリになっていた。

オリオンリーグは、よしもと沖縄所属なのだが、沖縄の老舗芸能事務所FECのライブにも参加することが思った以上に多い。

直近で、FECのライブに参加したところ、会場の館長さんが挨拶に来たという。その館長さんは、オリオンリーグをFECの芸人だと思っていたらしく、挨拶の際にこう言われたという。

「よしもとに負けるなよ!」

あ〜!自分たちも県外企業だった!と落として、会場中が拍手喝采。県内企業と県外企業の関係性を、このようにつなげて落とすとは、さすがの話術だと唸ってしまった。

フリが効いている上に、鮮やかにオチをつける玉代勢のテクニックはピカイチ。それに、お客さんの引き込み方が素晴らしい。とにかく、次は何、次は何、と気になってしまい、もっともっと話を聞きたくなるのだ。

いつまでも聞いていたくなる玉代勢の話。ぜひ、生で聞きに来てほしい。

瀬名波勇介(ゴリラコーポレーション)

FECお笑い劇場で6ヶ月連続1位を獲得した実力派コンビ、ゴリラコーポレーションのボケ担当・瀬名波勇介が2番手として登場する。パワー系のボケから言葉巧みな話術を駆使したボケまで、オールマイティにこなせる彼のスタンダップコメディを見るのは初めての筆者。どのような話が聞けるのか、非常に楽しみにしている。

「玉代勢さんの話、面白いよね。相方の剛くんの話が出たので、僕も相方がいるんですよ」

と切り出し、勇介の相方である、こうへいの話を始めた。剛くん同様、少し間の抜けたところがある(笑)というこうへいのエピソードだ。

芸人になりたての頃、バイクで2人一緒に舞台前日の稽古に通っていたときに事故ってしまったという。交差点の真ん中で倒れているのを、同じく稽古帰りの芸人に目撃されたそうだ。

その際、同期の芸人が、舞台を取り仕切る責任者に「ゴリラコーポレーションが事故で倒れているから、明日の舞台はダメかもしれない」と伝えるべきところ、「ゴリラコーポレーションが、もうダメかもしれない」と伝えてしまったという。その一言にお客さんから笑いがこぼれる。

その事故は、2人とも軽傷で済んだそうだが、ここで、こうへいの面白エピソードが披露される。看護師さんに、感覚の違和感がないかの確認のため、足の親指を触られ「ここ分かりますか?」と聞かれた際に「お父さん指」と答えたそうだ。

何と愛らしい答えだろうか(笑)。それを笑い話としてドヤ顔で伝えてくるという、こうへいの話をするときの勇介の顔が何とも優しくてキュンとした(笑)。

その後、勇介は宗教の歴史を語り始める。例えば、人類の進化の過程における宗教の儀式の話や、沖縄の宗教の話などだ。

特に、沖縄の歴史が好きだという勇介が語る、沖縄の仏教の話は興味深いものだった。特に、補陀落渡海(ふだらくとかい)の話は興味深い。いわゆる捨身行(自らの身体を犠牲にして仏道を求める修行形態)なのだが、その修行に生き残って沖縄に漂着した日秀上人が、沖縄仏教の始祖だという。

この日秀上人の面白いところは、仏教の布教だけでなく、妖怪封じも行っているところだろう。興味のある方は、「経塚の碑」で調べてみてほしい。

勇介がこんなにも沖縄の歴史に詳しいのは、琉球史が好きということもあるだろうが、芸人バスガイドとしての活動も関係しているのだろう。

歴史や宗教の話題は難しくなりがちだが、勇介の語り口は柔らかく、分かりやすいため、お客さんからも感心の声や笑いがもれていた。沖縄の歴史、特に仏教史に触れることは滅多にない。筆者も含め、カレー屋タケちゃんに来たお客さんは、説法(笑)が聞けて大満足だった。

最後はルッキズムに対する、ひと笑いを入れて終了となった。勇介の話は、非常にためになることが多く、笑いと勉強が融合した素晴らしいものだった。今後も、勇介のスタンダップコメディ説法(笑)に期待大だ。

りょうと(凸凹トラベリング)

凸凹トラベリングと言えば、今や押しも押されぬFEC所属の若手お笑いコンビだ。そのボケを担当するりょうとがスタンダップコメディのマイク前に立つ。いつもは、激しく動き回って場の笑いを掻っさらうりょうと。語りがメインのスタンダップコメディで、どのような姿を見せてくれるのか、筆者は密かに、楽しみにしている。

この日、りょうとが話してくれたのは、自身の学生時代の話。何と、今の見た目からは想像がつかないのだが、ヤンキーだったというのだ。

筆者は、りょうとといえば愛くるしい表情と動きで、お客さんに笑いを運んでくれる妖精だと思っていたのだが(笑)、どうやら人間だったようだ(笑)。

筆者のつまらない冗談はさておき、中学生の頃のりょうとは、学力テスト最下位だった沖縄の中でも最下位の学校の最下位を2回も取ってしまったことがあるほどの筋金入りだったという。

塾に入っても1週間、沖縄でかなり有名な塾に入った際には2日でクビになってしまったというりょうとだが、地元でヤンキーを更生させることで有名な塾に入ったことで、高校に進学することができたそうだ。

筆者は、りょうとの向上心に感心した。塾に通って短期間で辞めさせられてしまったにもかかわらず、ヤンキーを更生させることで有名だという塾に通うという心意気が素晴らしい。ヤンキーだから根性があったのかどうかは分からないが、この根性が今のりょうとを作った大きな要因かもしれない。

無事、農業系の高校に進学することができたりょうと。本来は、資源作物の基礎知識や活用、愛玩動物の飼育・管理に関することが学べる学科に入りたかったそうだ。しかし、先生に「無理だよぉ」と言われたそうで(苦笑)、野菜や草花の育て方などが学べる園芸化学科へ入学。

普段の授業は赤点を取ってしまっていたというりょうとだが、園芸については頭角を表したそうだ。その片鱗をのぞかせるように、家庭菜園や園芸について、お客さんが知らない知識を披露したりょうと。その知識の深さにお客さんからは感嘆の声が漏れる。

その他にも、農業系の高校あるあるを披露したり、ここでは書けないような際どい下ネタ(笑)も披露してくれた。

終盤は、農業大学校に進学した話や、その時の生活の厳しさ(笑)、芸人と両立していたことによる失敗などなど、さまざまな秘話を紹介。次は、アルバイト時代の話をすることをお客さんに約束して、マイク前から離れた。

スタンダップコメディは、その対象が広く、何を話しても良いのが魅力的なコメディ形態だと筆者は考えるようになった。

その中で、芸人が自分をさらけ出して話す半生は、非常に興味深い。辛さや苦しさもあったのだろうが、それを笑いに変え、お客さんを笑顔にさせてしまう芸人の話術の巧みさに頭が下がる。

りょうとの人となりを知ることで、さらにファンになった人は多いのではないだろうか。動きだけでなく、話術も抜群のりょうとの才能は、今後、大きなパワーになるに違いない。

たろう

飄々とした話し方に、そこはかとなく毒を散りばめた話が魅力的な、たろうがトリ前に登場。

筆者は、たろうの魅力にやられてしまった1人である。とにかく、見た目に反して、キツめの毒を吐くこともあるたろう。お客さんをいじることもあるのだが、そこでも毒づくことがあり、お客さんの反応を楽しんでいる節もある(笑)。沖縄にこんな芸人がいるんだ、という発見をくれた玉ライブと、出演してくれたたろうには感謝しかない。

今回、たろうが話したのは「マッチングアプリ」について。32歳になるたろう、健全な肉体関係を持つ目的でマッチングアプリをしているそうだ(笑)。この一言で、お客さんから笑いが漏れる。その目的は、確実に健全極まりない(笑)。

どうやら、2023年の「結婚の出会い」を調査したアンケートでは、マッチングアプリが1位だったという。これは、PR TIMESに掲載されており、正しい結果であることだけは伝えておこう(笑)。

たろうが語るのは、マッチングアプリで出会った変わった女性の話だ。この話が、お客さんのツボにハマり、爆笑の渦を巻き起こした。

マッチングアプリの良い点として、マッチングしたらすぐに会うことができ、すぐ次に進める(笑)ということだと力説するたろう。そのため、会わないと始まらないと、マッチングした1人の女性と会うことになったという。

その女性が「モンスターエナジーの女」である(笑)。名付けのインパクトが強く、この時点でお客さんからは笑いが起こる。

たろうをピックアップするため、女の子らしいピンクのラパンで来たというモンスターエナジーの女。たろうは、「ラッキー」と思ったそうだが、ドアを開けると足の踏み場に困るくらい、ゴミが散乱していたという。

一瞬、驚いたというたろうだが、「面白いことが起こるかも」というスイッチに切り替え(笑)、車に乗り込んだそうだ。芸人としての嗅覚、そして覚悟が素晴らしい(笑)。

その女性との珍道中の話は、驚きと笑いの連続だった。四六時中、モンスターエナジーから手を離さず、スターバックスのエスプレッソとモンスターエナジーを交互に飲むなど、カフェインばかり摂取する姿に、恐怖を感じたそうだ(笑)。

また、野菜嫌いなたろうとビーガンを名乗る女性との話も会場を盛り上げた。その中で、可愛い女性を泣かしたいという、自身の癖の暴露(笑)や、沖縄における健康寿命の話題を交えるなど、社会派な一面も見せてくれた。

最後は、女と野菜の食わず嫌いは止めると宣言して、マイクの前を離れていった(笑)。たろうは、本当に良い声をしているので、話に聞き入ってしまう。おそらく、女性ならファンになってしまうに違いないくらい魅惑の低音ボイスなのだ。

その低音ボイスが語る、下ネタの破壊力(笑)。一方で、社会問題を語る真面目さのギャップ。そして、毒を持った切れ味鋭い表現がお客さんを引きつけるのだろう。今後も、たろうが何を語るのか、非常に楽しみだ。

まーちゃん

いよいよ、大トリにまーちゃんが登場する。登場の際には、誰よりも大きな拍手と指笛が会場内に鳴り響いた。これだけで、まーちゃんの人気をうかがい知ることができるだろう。ここまで人気があるのには理由がある。

沖縄は基地の島として知られている。日本にある米軍基地の70%以上が集中しており、痛ましい事件や事故が発生し、ニュースとして取り上げられることが多い。

沖縄に住む人々にとって、基地の話題は非常にセンシティブなものだ。複雑な感情が入り混じり、沖縄県民でさえ基地の問題を仲間内で話すことがはばかられる雰囲気がある。

そんな中、「基地を笑え!」の掛け声で始まったのが、まーちゃんが企画・脚本・演出を行う「お笑い米軍基地」だった。

2004年8月13日、沖縄国際大学のキャンパス内に米軍のヘリコプターが墜落。この事件に関する本土と沖縄の報道のギャップに気づいたことがきっかけだったという。

そこから、沖縄では非常にシビアでセンシティブな内容の基地問題を、喜劇やコントを通して、興味を持ってもらい、ただ笑ってもらうことをテーマに開催されたのが「お笑い米軍基地」だった。

筆者は、この「笑ってもらう」という点に共感している。笑いは人々の記憶に残る。だからこそ、ふとした瞬間に思い出す。そこから、「あれ、沖縄ってなんでこんなに基地があるんだ?」「沖縄で起きていることって、本当は大変なことなのでは?」と考えるきっかけになる。

勝手な思い込みかもしれないが、まーちゃんには、そのような意図があったのではないかと思う。笑ってもらうことで、誰かの記憶に残ること。それが、考えるきっかけになることを、まーちゃんは期待したのではないだろうか。

と、だいぶ堅い話になってしまった(笑)。お笑いライブのレポートなのだから、ここからは、まーちゃんのスタンダップコメディについて書いていこう。

と思ったのだが、これが実は書けないのだ(笑)。話すネタ、話すネタ、すべてが規制コードスレスレで、ギリギリアウトな内容ばかり(笑)。だが、ここは、何とか書ける内容を探して書いてみよう(笑)。

当日の朝早く、起床したまーちゃんに不思議なことが起こる。何と、30数年ぶりに元カノからメールが来ていたのだという。そのメールの内容が「4年ぶり(当日は閏年の2月29日)の肉の日だね」だけだったそうだ。

怖い!(笑)第三者から見ても、かなり怖い内容のメールだ(笑)。まず、メールの意図がわからない。恐怖の正体は、得体の知れないものへの不安だという考えもあるくらいだから、このメールは、まさに恐怖そのものだと言えるかも知れない。

まーちゃんも、恐怖を覚えながら、さまざまな考えを巡らし、「これは宗教の勧誘に違いない」との考えに至ったことから、こう返したという。

「今日、夜7時半から農連市場の斜め向かいにあるカレー屋さんで宗教の集まりがあります。よかったら来てください」

この言葉に会場中が爆笑。玉ライブが宗教の集まりと勘違いされているということは、前回のレポートにも書かせていただいたのだが、それを逆手に取った返しだ(笑)。

「見たところ…来てない」

来てなくて良かった(笑)。来ていたら大変な事態になってしまう(笑)。このような、自身に起きた奇妙な話を、サラッと笑いに変えてしまう頭の回転の早さは、さすがの一言だ。

まーちゃんのマシンガントークは止まらない。昨日、自身が行っているお笑いライブ「泉崎コメディクラブ」後、ダジャレ好きな琉球新報のスタッフさんと行った新年会で起きた話、漢字だらけの車とのアレコレ(笑)を話してくれた。

内容が内容のため、書けないのがもどかしいが、これがライブの醍醐味だ。普段は聞けない話を、生で聞けるのがライブ。スタンダップコメディは、ギリギリでキワキワの話をする芸人もいるので、ぜひとも、現場に来て楽しんでほしい。

特にまーちゃんのスタンダップコメディは、その要素が強い(笑)。まーちゃんの真骨頂を味わい、思い切り笑いたい方は、ぜひ玉ライブに来てほしい!

オープンマイク

玉ライブ、ラストは恒例となっているオープンマイクの時間だ。お客さんの中から、自分の思いを話したい人がマイクの前に立ち、その思いを打ち明ける。それを、他のお客さんが聞き、優しく見守る素敵な時間。

そんなオープンマイクに、今日は4人のお客さんが立った。

長D(ヤングアンドオールド)

オープンマイク、口火を切ったのは、よしもと所属のお笑いコンビ、ヤングアンドオールドの長Dだ。

まーちゃんの後で、雰囲気が物凄いことになっていたため、「優しい目で見てください」と断りを入れた長D(笑)。その後、夜中のコンビニで働いていた頃の話を披露してくれた。

「仏のじいちゃん」と勝手に呼んでいたタクシー運転手がいたという長D。いつも「ありがとうねぇ」や「疲れてる顔してるからチョコあげよう」など、優しい言葉をかけてもらっていたという。

そんな仏のじいちゃんが、急にそっけなくなり、連日「タクシーが盗まれた」と話すようになったそうだ。ついには、「お前が犯人か」と言って詰め寄られたのだという。他の従業員の通報で、仏のじいちゃんは警察に連れていかれることに。

そして、それが長Dと仏のじいちゃんの最後の1日となる。仏のじいちゃんは、ボケの症状が出てしまい、そのような行動を取っていたようで、介護施設に入ることになったそうだ。

最後は、「大事な人には、ありがとうと言える人間になりましょう」と、素敵な言葉で締め括った。確かに、身近な人であればあるほど、ありがとうを言わなくなってしまいがち。筆者は、この言葉に感動した。長Dの言葉をしっかり胸に刻むことにしよう。

へっさん

2週連続、筆者もオープンマイクに登場(笑)。今回は、自身の経験を踏まえて、ブラック企業の特徴について語らせていただいた。

ブラック企業に勤務すること10回(笑)。ブラック企業コンシェルジュとでも言うべき筆者が、注意してほしいのが「アットホームな職場」と言うフレーズ。

このフレーズは非常に便利なもので、社長1人に数人の従業員がいる場合、家族のようだからアットホーム。週末にBBQなどに強制参加させられ、家族同様の付き合いがあるという意味のアットホーム。他に強みがないために使われるアットホーム。

このように、アットホームという言葉の危険性について語らせてもらった(笑)。これを読んでいる読者も、ぜひ「アットホーム」という言葉には気をつけてほしい。

ハヂチりか

続いて登場したのは、FECのタレントとして活躍するハヂチりか。今回、話してくれたのは、自身の芸名となっている「ハヂチ」について。

「ハヂチ」とは、琉球諸島で古くから行われてきた女性の入れ墨文化だ。初潮を迎えた証や婚姻の証として入れられたとされており、さまざまな紋様がある。

古くは、憧れの対象とされていたが、明治に日本政府が入れ墨を禁止したことにより、以降は排除対象となり、現在では「ハヂチ」を施している人はほとんどいない。

そんなハヂチを実際に施しているのが、ハヂチりかだ。沖縄が好きで移住してきた彼女は、沖縄独特の文化であるハヂチも好きになってくれたようで、その文化を残していきたいとの考えから、実際に自分の手に施してもらったという。

ハヂチの紋様の意味(矢尻は「嫁に行ったら戻らないように」や「魔除け」、丸い形はお盆を意味して「食べ物に困らないように」など)を解説してくれた。

しかし、次のエピソードには心が痛くなった。りかのハヂチを彫った人(ハヂチャーなどと呼ぶ)は、最初よく話しかけてくれたそうだ。しかし、りかが内地出身だと知った瞬間から、急に話さなくなってしまったという。最後までハヂチを彫ってくれたそうだが、その理由をりかが尋ねた際、こう答えたというのだ。

「入れちゃったものは仕方ないし」

せっかく、ハヂチの文化を理解し、好きになってくれて、実際に彫ってもらった人に対する物言いではない!意にそぐわなかったとは言え、このような言い方は…非常に悲しい気持ちになった。

それでも、ハヂチの文化を愛してくれるハヂチりかには、感謝しかない。もっともっと、沖縄の文化を愛し、その素晴らしさを伝えていってほしい。そのお手伝いができるよう、筆者も努力したいと思う。

カレー屋タケちゃんの娘さん

最後に登場したのは、玉ライブの会場である「カレー屋タケちゃん」の娘さんだ!小学生なのに、ハキハキとした話っぷりにお客さんは驚いた!

学校であった出来事を、素直に話す姿に会場のお客さんはメロメロ。国語の準備時間に悪ふざけをしていたら、クラスのみんなが集まってきて、全員参加してしまい、先生に怒られてしまった話。英語の時間に、先生の指示通りに動画のボタンを押したら、違ったものが出てきてしまい、大爆笑して倒れてしまった話を披露していた。

可愛らしさと、しっかりとした話っぷりに会場だけでなく、出演者もメロメロにしてしまう、カレー屋タケちゃんの娘さん。これは将来が楽しみだ!(笑)スタンダップコメディのトップランナーとして活躍する未来が見える!

生で観るからこその醍醐味がスタンダップコメディにはある!

最後は、出演者全員とお客さんが記念撮影。今回も、大盛況のうちに玉ライブは終幕した。

終演後、お客さんと出演者が語らう素敵な場面が、あちらこちらで見られる。玉ライブに来るお客さんは、本当に心の底からお笑いが好きなのだろう。笑顔の花があちこちで咲いていた。

出演者たちは、お客さんの話を真剣に聞いたり、交流を楽しんだり、写真撮影に応じている。本当に素敵な光景だ。筆者も、芸人やお客さんとの交流を楽しんだ。

壺屋の夜の道を帰る瞬間も、玉ライブの楽しかった時間を噛み締めていた。特に、まーちゃんのネタは、文字化もできないし(笑)、映像でも見ることはできないだろう。まさにシークレットライブのような感覚だ。

そんなネタが見られるのも、スタンダップコメディであり、生で観ることの醍醐味である。

「スタンダップコメディには興味あるけど、ライブに行くのは気が引けるな」と感じている人もいるかもしれない。

大丈夫、そんなあなたのために、玉ライブはある。演者だけでなく、カレー屋タケちゃんに集まったお客さん全員が、あなたを優しく迎え入れてくれる。

さあ、一歩踏み出してみよう。スタンダップコメディの扉を開いてくれるのを、心優しい人々が待っている。

玉ライブの詳細は、オリオンリーグ・玉代勢直のXで確認してください。予約に関しては、各出演者も受け付けています。

-お笑い観覧記, ライブレポート
-, , , ,