お笑い観覧記

沖縄の芸能の中心地に今年も笑いの花が咲く!「コザお笑い劇場」は今年も最高の笑顔に包まれた!

沖縄における芸能の中心地と言えば、ここしかないだろう。
そう、その街の名は沖縄市。その中心にあるコザこそ、沖縄の芸能文化が発展した場所だと個人的に考えている。

そんなコザで3ヶ月に1度、人々に笑顔を届けるイベントが開催されている。
「コザお笑い劇場」だ。
沖縄の芸能事務所、FECオフィスの芸人や沖縄市(特にコザ)にゆかりのある芸人が参加するお笑いライブ。

その面白さが評判を呼び、回を重ねるごとにお客様の幸せそうな笑顔が増えている。

笑顔は1ドルの元手もいらないが、 100万ドルの価値を生み出してくれる

これは、私の好きな言葉のひとつだ。
そう、笑顔にお金はかからない。しかし、100万ドル以上の価値を生み出す最高の商品。
そんな笑顔の花を咲かせてくれる「コザお笑い劇場」の観覧記をつづらせていただく。

(観覧記のため、芸人の皆様の敬称は略させていただいております。ご了承ください)

新春特別企画 コザお笑い劇場〜チャンプラリズムでネタ祭り!〜開演

誰もが一度は考えたことがあるのではなだろうか。

「この芸人と、この芸人が組んだら面白いだろうなぁ」

少し脱線するが(笑)、筆者は大のプロレス好きのため、いつも考えている。

「このレスラーと、このレスラーが組んだら…ドリームタッグだろ!」

古くは、猪木・馬場のIB砲、近年では棚橋弘至とオカダ・カズチカのタッグなどが実現している。実際、ドリームタッグの試合は興奮するものだ。

そのドリームタッグが、沖縄芸能の首都とも呼ぶべきコザで実現すると聞けば、観に行かずにはいられない。

今回のコザお笑い劇場は、FECの芸人がコンビをシャッフルし、ユニットを結成。コントや漫才を披露して、一番面白いユニットを決めるという内容のようだ。

ここにも、お笑い好きであり、プロレス好きである筆者の心をくすぐり倒す要素が盛り込まれている(笑)。
そう、「誰が一番面白いんか決めたらええんや」ということだ。

そんなプロレスチックな面白さにも誘われて、「沖縄市民小劇場あしびなー」へ。
劇場入口では、見慣れた顔の芸人たちが、客入れを行っている。どことなく漂う緊張感は、今回の企画に対するものだろう。気合が入っているように見える。

あしびなーに入ると、正面に沖縄ポップカルチャーの第一人者である「照屋林助」氏、沖縄民謡界の重鎮「登川誠仁」氏、「嘉手苅林昌」氏の写真が出迎えてくれた。
この瞬間、「沖縄芸能の首都にやって来たなぁ」という気持ちにあふれ、身が引き締まると同時に「さあ、今日も楽しむぞ!」というリラックス感を覚える。

客席は本日も多くの人で賑わっている。
常連の方々、小さなお子さん、老若男女が笑顔で席に座る姿。多幸感が溢れる会場だ。

前説〜凸凹トラベリング〜

本日の前説は凸凹トラベリングの2人。
コンビ名のとおり、背の高いかいりと、小柄なりょうとが登場して正座をする。
かいりの「口・春の海」が流れる中(笑)、お客様に向かって、りょうとが新年慶びの挨拶。
ところが、言い間違えを連発してしまう。
それを、かいりが囁きおかみのように、訂正するという展開に。
会場はこれに大爆笑。
いきなり会場の空気を一気に温めることに成功する。

この爆発力が凸凹トラベリングの素晴らしいところだろう。
お客さんの心を、あっという間にお笑いライブに引き込む力がすごい!

そして、りょうとの真骨頂、動きのある前説が展開される。
会場をところせましと動き回るその姿が愛くるしく、お客さんにも愛される理由だろう。

そのりょうとを、しっかりと支えるかいりのフォロー力も目を見張るものだ。
「でしゃばらないツッコミ」とでも言うべきだろうか。心地良いツッコミが会場内の空気を柔らかくする。

前説の最後は、撮影タイム。
りょうとがジャンプし、それをかいりがお姫様抱っこのように抱え止める荒技(笑)を披露した。
会場内は笑いと「頑張れ」の声。
空気は、完全にあたたまり、心は完全にお笑いライブに向かって一つになった。

いよいよ、ユニットシャッフル企画が始まる。
会場のお客さんの目も期待に輝いているようだ。

オープニング

オープニングには、今回のコザお笑い劇場に参加するFECメンバーが、ユニットごとに舞台上に勢揃いして登場。
普段なら横並びになっているはずのコンビ、ピン芸人たちがそれぞれバラけて立つ姿に、ドリームタッグ感が漂っている。

オープニングのMCは、「わさび」の具志堅将司と「ゴリラコーポレーション」の瀬名波勇介の人気コンビから1人ずつ、そして、最近なぜか芸人と思われてしまい、多分、良い気がしていない(笑)「ハヂチりか」が担当。

おそらく、小気味よく芸人と絡めるところが、彼女が芸人として思われてしまうところかもしれない(笑)。
MCを担当する際は、言葉選びや間の取り方が不思議と噛み合うため、芸人より面白いときもある。ぜひ、皆さんも一度、FECお笑いライブを観に行き、ハヂチりかのMCを見てほしい。そして、その際には「彼女はタレント枠なんだ」と言う意識を忘れないでほしい(笑)。

さて、前置きが長くなってしまった。
オープニングも笑い溢れる言葉の応酬が繰り広げられていたのだが、そこまで書いてしまうと、読者の負担が大きくなるくらいに長くなるため、泣く泣くカットさせてもらおう(笑)。

コザお笑い劇場、新春特別企画のシャッフルユニット、いやドリームタッグは以下の8組!

はーとふるちょっぷ|あきら本店/アルティメットスージー/ヨーガリーまさき

普段着|小だいらくん(わさび)/もりみつ(キンピラゴボウ)

居酒屋ゴールデン|ボーズメンKEN /かいり(凸凹トラベリング)

来世は吉田がいい|こうへい(ゴリラコーポレーション)/つかやまちえ

アゴ長大食いスクショマン|なかち/モコモコもとし(オードブル)/ただのあきのり

くるぶしストライク|松田けんご(オードブル)/りょうと(凸凹トラベリング)/たいが(キンピラゴボウ)

ときめきフリージア|アカバナー青年会/知念だしんいちろう

クイーンあうと|具志堅将司/瀬名波勇介

名前を見ても、コンビ、ピンとして第一線で活躍する面々が揃っている。
さらに、今回はゲスト出演として、コザ芸人の照れ屋リンシュケと、ウーマクーボーイズが参戦!
両組は審査対象とならないが、こちらも楽しみな顔ぶれだ。

会場もすでに準備万端整い、今か今かと、ひと笑いを待ちわびている。
ついに会場の照明が落とされる。
呼び込みの音楽が流れる。

新春特別企画 コザお笑い劇場〜チャンプラリズムでネタ祭り!〜の開幕だ!!

はーとふるちょっぷ

トップバッターを務めたのは、はーとふるちょっぷ!
あきら本店は、筆者が個人的に、少し毒の入ったネタが大好きな芸人。ヨーガリーまさきは、野球監督キャラ「タワタワタ」を演じており、さまざまなトラブルに巻き込まれる様子を元気の良さで乗り切るネタが大好きな芸人だ。
アルティメットスージーは、筆者は初めてネタを見る。個人的に知り合いを通じて知っているのだが、初めてネタを見るということで、筆者自身もなぜか緊張してしまった(笑)。

ネタは、本当にハートフルなもの。「あれあれ」で会話が成立してしまう夫婦に対して、どっちも「あれあれ」だけで通じ合っている様子を見て、強面のあきら本店が「おしどり夫婦で、ハートフルだぁ」と落とす、なかなか見ることのできないネタ(笑)。
最後は、3人揃って「はーとふるちょっぷ!」と決め台詞を決める、何ともハートフルなコント。会場もほっこりした雰囲気に包まれる。

しかし、ここでハプニングが発生。スージーがセリフを飛ばしてしまったのだ。そこを、逃さず、あきら本店がツッコミを入れて笑いを誘う。

そして、極みつきは、あきら本店がヨーガリーまさきに対し、予定になかったネタを振ったシーンだ。
先ほど、小田和正の名曲「言葉にできない」のサビ、「言葉にできない」の一節を、本当に言葉にせずに披露したネタ。これを再び振ると言う暴挙に出た(笑)。一瞬戸惑った表情を見せたまさきだが、そこはプロ。しっかりと小田和正の「言葉にできない」を長渕剛のモノマネで乗り切った。

プロはハプニングがあろうと、どこかの突破口を見つけ、そこを突いてお客様を笑顔にする。そして、ミスをしても、ネタをやり切ることで笑いを誘う。
お客さんを笑顔に!と一生懸命さが伝わり、そこが、どこか滑稽で笑ってしまう。ズレの面白さ(おそらく意図したものではなかっただろうが)を存分に堪能できた。

出番終了後の幕間インタビューでは、スージーが間違ったことを反省し、「いっぱい間違った」とこぼしたのだが、まさきが「全然間違ってないですよ。良かったですよ」とフォロー。
芸人同士の、この優しい場面、筆者は好きでたまらない。あきら本店、アルティメットスージー、ヨーガリーまさき、本当にハートフルなコントをありがとう!

普段着

いじられキャラの小だいらくんと、ぶっ飛んだキャラを演じたら右に出る者はいない(もちろん、褒め言葉!)と、筆者が思っているもりみつが組んだコンビ「普段着」。

普段着と言いながら、小だいらくんは和服姿というアンバランス感にクスッとしてしまう。そこに、突然やっって来たのは、結婚がしたいから、娘さんがいそうな家に突撃し「娘さんを僕にください!」と言い回っていると言う男。しかも、女性と付き合ったことはおろか、手を握ったこともないという。

設定がぶっ飛んでいる(笑)。そんな男が、いきなり他人の家に上がり込み、結婚の許しを乞うと言うシチュエーション(笑)。女性の気持ちを置き去りにして結婚の話を進められると考える、かなりぶっ飛んだキャラの男だ。やはり、キャラがおかしいと、もりみつの演技力が光るように感じる。
小だいらくんの「うちに娘はいない」に対し、「ハズレの家かぁ」の答えはサイコパスチックで笑わずにはいられなかった。

しかし、ここから話は意外な展開に。きっちりとした和装を着こなし、お父さん然とした小だいらくん、実は女性と付き合ったことも手を握ったこともないことが発覚。そう、お父さん然とした初老の男は、童貞だったのだ!(笑)

そして、子どもたちも観に来ているライブで「童貞」を連呼する2人。会場は笑いと、ほんの少しの恥ずかしさが渦巻くカオスの世界に(笑)。本当に発想の飛躍ぶりに爆笑するしかないコント。

が、このコントが凄いのはここから。小だいらくん演じる男性は、50歳の誕生日を迎えた当日にこのハプニングに遭遇。50歳で童貞のままだと魔法使いになれるという、どこかで聞いたような都市伝説をなぞるような展開に(笑)。

その導き手としてやって来たのが、もりみつだったのだ。そして、小だいらくんは無事、魔法使いになってハッピーエンド?で終了(笑)。

幕間のインタビューで、言っていたが、確かに客席からは「やべぇ」という声がもれていた(笑)。そして、童貞のくだりで、客席がサッと引いた瞬間も(笑)。

強烈な印象を残した2人。そして、2人とも演技がうまく、引き込む力を持っていた。だからこそ、荒唐無稽な設定に見えるコントも成立するのだろう。プロの芸人の芸の力を堪能した気がする、素晴らしいコントだった。

居酒屋ゴールデン

筆者が観覧したときは、漫談をしているボーズメンKEN。話術がたくみで、くすぐりの笑いと爆笑させたい笑いを織り交ぜた漫談が素晴らしい芸人だ。
その相方をつとめるのは、前説で登場した凸凹トラベリングのかいり。どちらかといえば、相方のりょうとが動きを担当し、そこに的確なツッコミを入れ笑いを際立たせる印象が強い芸人。

そんな話術が得意な2人が選んだのは、なんとダンスを主体にした「空耳韓国語」ネタだ。ダンサブルな音楽と共に、日本語ではこう言うが韓国語になると…というネタ。

日本と韓国では、言葉の意味が違うことから誤解や、意味のズレが出て面白かった!おそらく、そのような言葉はたくさんあるのだろうが、選択した言葉のセンスがキラリと光っていた。

「ネックレス=モッコリ」や「夏=ハゲ」、「手を洗う=シッコ」など、外国で日本語を話す際には気をつけなくてはなぁ、と思わせてくれる教養系のネタ。笑えて勉強になる、教育系お笑い芸人の地位を確立できそうな雰囲気だった(笑)。

それよりも何よりも、2人のダンススキルもお客さんを楽しませていた。特に、かいりが披露したスリックバック(宙を浮いているように見えるステップ)だ!客席からも感嘆の声が漏れるほど素晴らしかった!自分ではできていなかったと言っていたが、いや、見事なスリックバック披露していた。ダンスユニットとしてデビューも近い…だろうか?(笑)

そんなダンサブルなネタだったものの、最後は「シッコせぇよ(手を洗えよ)」で落としたのは「さすが!」の一言。前言のダンスユニットの件は撤回しよう。やはり2人は芸人だ。

幕間のインタビューは、まさに試合を終えたばかりのスポーツ選手のように息が上がっており、「ダンスって全身使うから疲れるよね」と改めて思わせてくれた(笑)。
いや、冗談はさておき、筆者が思う2人のキャラと違っていたので驚きつつ、こんなネタもできるのか!と感心。シャッフル企画で新たな一面を見ることができ、お得感に満載に感じた。

来世は吉田がいい

不思議なコンビ名の「来世は吉田がいい」には、FEC期待のホープが参加している。筆者が観覧するたびに爆笑をかっさらっていく姿は、笑いのヴィーナスといったところだろうか。

それが、つかやまちえだ。男性役をこなす彼女が繰り広げるのは、日常をほんのわずか異化したシチュエーションのコント。勝手ながら、筆者は心の中で「お笑い界の大江健三郎」と呼んでいる(笑)。どこか文学的な感じがするコントの名手が、パワープレイも得意な「ゴリラコーポレーション」のこうへいと、どのようなコントを繰り広げるのか?楽しみで仕方がないコンビだ。

設定はプロポーズを控え、緊張する男性(つかやまちえ)が待つレストランに女性(こうへい)がやってくるシーンから始まる。が、こうへいの女装姿が爆笑を誘った。完全に出オチ状態だが、ここからさらに爆笑を呼び起こすのが、このコンビの素晴らしさ。

どうでも良い隠し事をカミングアウトしていくのだが、次第にその内容がキツくなっていくという展開(笑)。

最初は本当に些細なこと。「実は左利き」「29歳といっていたけど実は30歳」、ここまでは、はっきり言ってどうでも良いことなのだが、「竜のタトゥーが入っている」というカミングアウトが。さらに、それが見る角度では「枝豆」に見えるという(笑)。

「こんなカミングアウトは嫌だ」という大喜利を見せられているような感覚。しかも、その答えが秀逸なのだから爆笑せざるにはいられない。

男性もカミングアウトするのだが、女性のカミングアウトの内容がすべて上回ってくるという展開も素晴らしかった。「実はアパートで犬を3匹飼ってます」には「アナコンダを飼ってます」、「今、500円しか持っていない」には「借金が500万円あります」という具合だ。

そして、オチに向かってはまさかの展開が待っていた。自分の心の声が大きいことに気づいた男性。なんと、その心の声を女性は聞くことができたのだ。しかもスプーンまで曲げられるというサイキック(笑)。

そんなサイキックな女性でも良いからと、求婚した男性だったが、ここで大オチ。女性はまさかの既婚者だった(笑)。キレイに落として大爆笑をかっさらった、来世は吉田がいい。

シャイながら大胆不敵な発想で笑いを作り出すつかやまちえを、パワー系の笑いで大爆笑という化学変化に導いたこうへい。最高のコンビネーションに拍手喝采。特に、つかやまちえにとって自分をお笑いの世界に導いた憧れの存在、ゴリラコーポレーションと一緒に作り上げたコントは感慨深いものだっただろう。心なしか、いつものちえより楽しそうだった気がするのは、筆者だけだっただろうか?

来世は吉田がいい、このコンビは素晴らしかった。

アゴ長大食いスクショマン

不思議なユニット名といえば、こちらも負けていない「アゴ長大食いスクショマン」が登場。なかちの「アゴの長さ」、モコモコもとしの「大食い」、ただのあきのりの「気になるものはスクショする」という特性(笑)から取ったそうだ。

そんな不思議なユニット名の3人が繰り広げたのは、ボクシングコント。このコントの見どころは、試合ではなくインターバルの風景だ。一般的には、ボクサーとセコンドが中心となるコントが繰り広げられそうなのだが…。

そこを裏切ってきたのが、このユニットの素晴らしさ!なかち演じるボクサーがデビュー戦の緊張を解きほぐそうとするインターバル中に事件が起こる!なんと、ラウンドガールを務めていたのがレフェリー!(笑)モコモコもとしのラウンドガール姿に、会場からも笑いが起こる。

ボクサーは戸惑い、ラウンドガールとレフェリーの顔が重なり、集中できなくなってしまう。観客も同じ気持ちだ(笑)。そんな中、2ラウンド目が始まる。なんとかしのいだが、自分の集中力を欠くために、相手とレフェリーがグルだと感じたなかちはレフェリーに詰め寄る。しかし、その答えは意外なものだった。そう、まさかの「経費削減」のため(笑)。

そして、さらに驚きの光景が広がる!まさかの相手ボクサーである、ただのあきのりまでラウンドガールを務めていたのだ!(笑)が、驚きはまだ続く。まさかの、次のインターバルでラウンドガールにならないかと誘われたのだ。「できるかー!」とツッコミを入れてオチがついたのだ。

が、なんとここでコントは終わらず、最後はなかちもラウンドガール姿で登場!(笑)そこで大オチとなった。

意外性の連続にお客さんも笑いが絶えていなかった。そして、何を見せられているのだろうという困惑の雰囲気も笑いの相乗効果になったのかもしれない。

幕間のインタビューでは、ただのあきのりのラウンドガールの衣装は、奥さんが夜鍋をして作ってくれたものだと判明。客席からも感嘆の声がもれる。まさに、「はーとふるちょっ」…いや、これは別ユニット(笑)。ただのあきのりの、家族団らんを垣間見たような、ハートフルな空気に会場は包まれていた。

くるぶしストライク

実は、個人的に一番楽しみにしていたユニットは、「くるぶしストライク」だ。体を使ったボケとマシンガントークを繰り出すりょうと、ニヤリとさせるような細かなボケを滑り込ませる松田けんご、はっちゃけたコントも正統派漫才もこなし、キレのあるツッコミを見せるたいが。この3人が組んだユニット、きっと面白いに違いないと思って登場を待っていた。

オープニングでは姿がなく、本体(メガネ笑)とスニーカーだった松田けんごの姿があり、まずホッとしたという感想(笑)。

コントはプール帰りのシャワー室前。同級生のマドンナ、ゆみちゃんがプールに来ていたことから、もしかしたら、今、シャワー室にマドンナがいるのではないかというシチュエーション。学生時代の男子チックなノリのけんごとたいがに、観客席からは笑いが漏れている。

ゆみちゃんがいるかもしれないという期待感を抑えられず、青春を楽しもう!とシャワー室のカーテンを開けると、そこにはなんと!水着姿のりょうとが!(笑)まるで小学生のような格好に客席は大爆笑!わかっていても笑ってしまう、りょうとの表情と動きはピカイチだ。

そして、期待する男子2人と、それをスカすりょうとの兼ね合いが何度も爆笑を誘う。それを引き立たせているのは、男子を演じる2人。表情と言葉で、何度も裏切られるに決まっているのにカーテンを開けるワクワク感を演出し、「あ〜、やっぱり裏切られたぁ!」で笑いを引き起こす相乗効果。

さらに、りょうとは全身に油を塗っているようで、体がテカテカしており、往年の「めちゃイケ」を見ている気分に(笑)。油谷さんのようにテカテカしてはいなかったが、テカテカな状態でコミカルな動きをつけるものだから、会場中の爆笑を誘っていた。筆者も、涙を流しながら笑っていた1人である(笑)。

幕間のインタビューで語っていたことで驚いたのは、舞台上のセットを自分たちで材料を購入して作ったということ。演者、大道具までこなす3人に脱帽。ちなみに、りょうとは大量のサラダ油を塗っていたそうだ(笑)。サンオイルとかではなくサラダ油…芸人魂を見た気がした(笑)。

ときめきフリージア

今回のコザお笑い劇場、一番驚かされたのはこのコンビだった。ときめきフリージアは「素晴らしかった」の一言に尽きる。

ミステリアスな芸人と紹介されることもある、アカバナー青年会。スッと着こなすスーツと、イケオジ系の端正な顔立ち。しかし、話し出すと完全に沖縄のおじさんというギャップが素晴らしい!大魔神・佐々木のような落差のあるフォークボールを見たような気持ちになった(笑)。

そして、沖縄県民なら誰もが知っているであろう「大兼のぞみ」というユタキャラでもお馴染み、知念だしんいちろうが組んで披露したネタは…なんと漫才!しかも王道のしゃべくり漫才だ。漫才好きの筆者にはたまらない展開。全8組中、漫才で挑んだのはときめきフリージアだけだったので、かなり目立ったと思う。

アカバナー青年会の昔語りに、知念だしんいちろうがキレのあるツッコミを入れていくスタイルは、まるで漫才歴30年以上のベテランを見ているような小気味良さ。

つかみのセリフ「ときめいてる?」から始まる漫才は、マッチングアプリの話へと流れていく。その際のアカバナー青年会が指摘する、マッチングアプリの問題点は的を射ている。マッチングアプリのプロフィールは嘘だらけ(笑)。

実は、マッチングアプリに関する記事を書いていた経験がある筆者。勉強にと思って実際に登録して利用していた時期もあるが、まぁ、本当に嘘が多いイメージがある。もしかしたら、僕が書いていたアプリが悪いのかもしれないけれど(笑)。

そして、話は小学生の頃にサバニを燃やした話やら(笑)、そのサバニの消火活動に消防車が来たのを見て、捕まったら死刑になると思ったという話やら、ノストラダムスの大予言を信じて、1999年に地球が滅亡するから好きなように生きてきたら、こうなりましたぁ(笑)という話までを、立板に水のようにまくし立てるアカバナー青年会。それに冷静かつ厳し目のツッコミを入れる知念だしんいちろう。素晴らしいコンビが誕生した瞬間を見た気がした。

所々に散りばめられた、小ボケ大ボケ。それがきっちり笑いが取れているのだから凄い。年を取ると話が脱線するという冒頭の伏線を回収しながら繰り広げられた漫才、息の合った2人。これでコンビではないなんて信じられないくらいだ。

今後、このコンビは見られるのだろうか?筆者は、こう言いたい!「2人の漫才が見たいです!また、何度でも!」

クイーンあうと

今や押しも押されぬラジオパーソナリティとしての地位を確立した「わさび」の具志堅将司。沖縄では、知らぬ人がいないラジオ番組「具志堅ストア」の店長を務めており、演者のためにコントを書き下ろしてもいる「沖縄のバカリズム」と言っても過言ではない(少なくとも筆者はそう思っている)!

相方は沖縄でも屈指のコント師「ゴリラコーポレーション」のボケ担当、強面ながらどこか憎めないチャーミングな笑顔の持ち主、瀬名波勇介。FECお笑いライブ6ヶ月連続一位という実績を持ち、パワフルかつテクニカルさも兼ね備えたコント師がタッグを結成となれば、注目せざるを得ない。

シチュエーションは殴られ屋。勇介が演じる殴られ屋が、客である将司にボコボコに殴られてしまったというシーンから始まる。殴られ屋なのにボコボコに殴られてしまっている時点で、すでに面白く、客席からは爆笑がわき起こった。

しかも、この殴られ屋、小さい頃から東大を目指して勉強し、卒業したという経歴の持ち主。そんな彼はなぜ、殴られ屋を選んだのか(笑)。しかも、この仕事で家族まで養っているというのだから、これは爆笑せずにはいられない(笑)。
「俺には殴られ屋しかできない!」「もっとできることあるよ!」の掛け合いは最高に面白かった。

殴られ屋という設定が勇介の風貌にもマッチしているのが、よりリアリティがあって笑いを誘っているように感じられる。

殴られ屋しかできないことを証明しようとする勇介、容赦なく殴りかかる将司のやり取りにも観客は爆笑。結局、ボコボコにされてしまう勇介だが、ここで将司からまさかの一言。

「センスはないかもしれないけど、素質はある。僕と一緒に練習して世界一を目指しましょう」

まさかのスポ根の展開(笑)。殴られ屋からプロとして世界一を目指す展開だろうか。某ボクシング映画の主人公のテーマにのって、トレーニングを積む姿。最後はどんな展開になるのか、世界一のボクサーになるのか、お客さんの想像も膨らんでいく。

が、勇介、逃亡(笑)。まさかのオチに客席も笑いと拍手に溢れた。

幕間のインタビューでは、ハヂチりかから、勇介が「あしたのジョー」の丹下段平に似ていると指摘があった。なるほど、確かに!(笑)筆者が何となく感じていた違和感はこれだったようだ。ハヂチりかのナイスなツッコミに感謝(笑)。

ここで新春特別企画に参加した全8組のネタが終了。ライブの最後に観客投票による勝者が決まる!一体、どのユニットが優勝し、お年玉をもらうのか、最後までドキドキワクワクの展開だ。

ゲスト 照れ屋リンシュケ

勝者を決める前であっても、決してお客さんをクールダウンなんてさせないのがコザお笑い劇場!(笑)
ゲスト枠で登場したのは、コザ芸人の「照れ屋リンシュケ」。
彼が扮するのは、沖縄ポップカルチャー界の第一人者、この劇場に肖像が飾られる偉大な人物、そう、照屋林助だ。

ご子息である照屋林賢氏も認められているというリンシュケ。彼が繰り広げるのは、公開放送のラジオ番組というシチュエーションだ。その語り口は軽妙で、聞き心地の良い言葉遊びがふんだんに散りばめられている。

掴みは定番となった、客席と一緒に行う「リンリン」コール。両手で電話の受話器を作り(親指と小指を立てるポーズ)、リンリンの掛け声で両手をクルっと回転させるこのポーズは、今やコザお笑い劇場の定番だ。そして、お客さんの反応を見ての「照れる〜」の一声。ああ、コザお笑い劇場に来たなぁと思わせてくれる。
お客さんの中には、照れ屋リンシュケ目当てで来る方もおり、まさに、「コザ芸人」の名前に違わぬ人気と言えるだろう。

今回のネタに持ってきたのは、「コザかるた」なる、どこかで聞いたことがあるような、聞いたことがないような(笑)、コザ独自のお正月遊びについて。

あるあるネタを、かるた風に紹介するのだが、これがまた秀逸な内容。コザのことを知らない筆者でも笑ってしまったのだから、ほとんどのうちなーんちゅは笑ってしまうに違いない。

例えば、「あ」の札は、「安慶田中、青い制服しに(とても)目立つ」や、「お」の札の「音市場(音楽施設)、お年寄りの憩いの場」など、誰もがクスッと笑ってしまう内容に会場も笑いに包まれる。

そして、おなじみ絵本の読み聞かせネタでは、読み聞かせ役との軽妙な掛け合いがクスッと笑いを誘う。全8組のネタを見終わって、やや疲れ気味の感があった客席だったが、柔らかい口調のリンシュケに癒しと笑いをもらったように感じた。

実は、数年来の知り合いの方なので、いつもコザお笑い劇場には足を運ばせていただいている。筆者もリンシュケ親衛隊の一人なのだ。

スペシャルユニット ウーマクーボーイズ

いよいよ、今回のコザお笑い劇場、大トリを務めるユニットが登場する。その名も「ウーマクーボーイズ」!結成から20年以上(個人ブログに記載れている漫才の記事で最も古いものが2012年なので、20年以上になると思われる)になるという、同級生コンビだ。

FEC旗揚げから在籍し、今や「お笑い米軍基地」を主催し、その視点の鋭さと「米軍基地」という非常にセンシティブなネタを笑い飛ばすセンスの持つ主、まーちゃん。

やぎのシルーのキャラでも知られ、沖縄北部の訛りがなんとも愛らしい、いさお名ゴ支部。沖縄の日常を切り取った漫談は、見ているうちなーんちゅの心をくすぐってくる。

そんな2人が結成したのがウーマクーボーイズだ。恥ずかしながら、筆者はウーマクーボーイズを知らなかったので、今回の舞台が初見。そして、見事に度肝を抜かれてしまった。

とにかく暴走しがち(笑)なまーちゃんは、今回も舞台どころか会場をところせましと動き回る。独特のハスキーボイスが響き渡り、客席を巻き込むと会場から大爆笑が起こる。

その暴走を、いさお名ゴ支部が「でーじ、うーまくー!(とっても、やんちゃ)」と声を張り上げてツッコむ姿、筆者にとって見たこともない光景が笑いのツボを刺激しまくった(笑)。

ネタは進み、いさお名ゴ支部が衣装が半袖だから寒いと言えば、まーちゃんは温かいもの買ってくるから面白いことして間をつなげと長時間放置(笑)。その間をつなぐように必死に漫談をする。途中、なぜかバスケットボールを渡されてドリブルをしたり、その最中に客席から電話がなったり(いさお名ゴ支部は「出ていいよ」と流していた笑)と、もはやネタなのか、何なのか分からないカオス状態だ(笑)。

温かいものを買いに行ったはずのまーちゃんが、冷やし中華を買ってくるというオチで終了。2人揃っての「でーじ、うーまくー!」に会場からは爆笑が巻き起こった。

ベテランコンビの汗だくだくのコント、本当に素晴らしかった。台本があったのか、なかったのか、非常に興味がある(笑)。アドリブだらけだったとしたら、もはや阿吽の呼吸だけでネタをやり切った2人には拍手喝采もの!涙が出るほど、笑わせてもらった2人には脱帽だ。

結果発表!全8組のシャッフルユニットの頂点に立ったのは誰だ!?

ウーマクーボーイズのパワフルなネタの後、ざわつく会場に緊張感が満ちる。いよいよ、シャッフルユニットの勝者を決める投票が始まるのだ。

投票方法はシンプル。まず、ユニットが2組出てきて、お客さんが勝ちだと思った方に拍手するという方式だ。勝った方は勝ち残りとなり、新たな1組が出てきてお客さんの判断を仰ぐ。これを繰り返し、最後まで勝ち残ったユニットが、お年玉ゲットなる。

最初に呼び込まれたのは、はーとふるちょっぷと普段着。お客さんの拍手量は、なんと同じくらい。この場合、メインMCのハヂチりかが勝者を決めることに。果たして、ハヂチりかの判断は…

勝者 普段着!

まず勝ち残ったのは、普段着。強烈なキャラクター設定とファンタジー要素が勝利の要因か?(笑)続いて、普段着と居酒屋ゴールデンがお客さんの審査を受ける!

こちらも、なんと拍手量は同等!再び、ハヂチりかが判断することに。果たして、勝者は…

勝者 居酒屋ゴールデン

2人のダンスが功を奏したのかもしれない!(笑)続いては、来世は吉田がいいが登場。会場の笑いをかっさらった前世と吉田だったが、居酒屋ゴールデンの逆転があるのか…。勝者は…

勝者 来世は吉田がいい

圧倒的なお客さんの支持を得た来世は吉田がいいが勝利!若手のホープ、つかやまちえと実力者であるゴリラコーポレーション・こうへいの相乗効果が大爆笑を生んだユニットが優勝候補として躍り出る形に!

続いて出てきたのは、アゴ長大食いスクショマン!強烈な支持を受ける優勝候補に喰らいつくことができるのだろうか…。

と、ここでまさかのハプニング発生!アゴ長大食いスクショマンへのお客さんの拍手が「0」という信じられない事態に!(笑)まさかの事態だが、芸人としてはおいしすぎる!(笑)愕然とするアゴ長大食いスクショマンの3人だが、その姿、ごめん!面白かった!(笑)

勝者 来世は吉田がいい

つづいては、くるぶしストライクが登場。ネタでは会場の反応は良かった。果たしてどちらが勝つのか…緊張の一瞬。

勝者 来世は吉田がいい

わずかの差で、来世は吉田がいいが勝利!お年玉に一歩近づいたのがわかる勝利だ。続いては、満を持して登場のときめきフリージア。こちらも個人的には優勝候補と思っているのだが…果たして、どちらが勝つのか…。

お客さんの拍手量では、何と互角!!これでどちらが勝つか分からなくなった!判断は、ハヂチりかに委ねられた。勝者は…

勝者 来世は吉田がいい

接戦を制したのは、来世は吉田がいい!実力伯仲の両組は、本当に紙一重で来世は吉田がいいが勝利したような気がする!いよいよ最終組、クイーンあうとが登場。こちらもお客さんの反応は上々だったが、果たして逆転勝利を収められるのか…。

と、思ったら、クイーンあうとの拍手量が明らかに足りない(笑)。もはや勝利は決定!シャッフルユニットの頂点に立ったのは!

来世は吉田がいい!

シチュエーションからセリフ回し、出オチ感の強かった外見もすべてひっくるめて、来世は吉田がいいの圧勝だったと言っても良いだろう!

お年玉を受け取る、つかやまちえの姿が誇らしそうで良かった!そして、こうへいから、お年玉はちえの自練(自動車教習所の沖縄での呼び名)代にあてることが発表された(笑)。

おめでとう、来世は吉田がいい!そして、最高の笑いをありがとう、来世が吉田がいい及び出場してくれた芸人の皆さん!!

エンディング

エンディングは、全芸人が勢揃いして、挨拶や告知を行なっていく。そんな中でも、まーちゃんは元気よくシャウトしていた(笑)。元気な50代、筆者の目標にしたい(笑)。

そんな中、一番印象に残ったのは、FEC代表の山城智二氏の挨拶だった(笑)。客席から拍手をもらえなかったアゴ長大食いスクショマンをいじりながら、優勝者はアゴ長大食いスクショマンだと発表!近年、稀に見る事態に(笑)、こんなに面白いことはない!と優しく手を差し伸べる。さすがは、FECを率いる代表。そして、自身も芸人としての経験からくる優勝者発表は、きっと芸人の心にグッと来たに違いない…たぶん(笑)。

エンディングは、笑顔にあふれた大団円。幕が降りるまでの間、お客さんからの拍手は鳴り止むことはなかった。

やっぱりドリームタッグは素晴らしい!

あの芸人とあの芸人が組んだら…そんなことを、お笑いファンならきっと一度は考えたことがあるかもしれない。もちろん、いや、今のコンビが良いに違いない!ピン芸人として面白いんだから、ユニットを組む必要はない!そんな意見もあるだろう。

筆者は、どちらの気持ちも理解できる立場だ。シャッフルユニットは、違うコンビやピン芸人として活躍している人が組むことによって、思いもよらぬ相乗効果や化学変化を生み出すかもしれない。今回、筆者はその現象をときめきフリージアに見た。もう一度見たいユニットになったことも添えておきたい。

プロレスにはドリームタッグがあり、ファンは誰と誰が組んだ試合を観てみたい!と妄想する。これは、お笑いにもあって良いのではないだろうか。きっと、相乗効果が生まれて、「えっ、このユニットすごい面白い!また観たい!」となるかもしれない。

今回のコザお笑い劇場では、そのお笑いドリームタッグを観ることができた。そして、お客さんは、そのドリームタッグに心から笑ったに違いない。

今回のユニットに参加した芸人たちは、またそれぞれの立場に戻って芸に磨きをかけることだろう。それは、自分達のコンビ、芸のためであると同時に、またいつむちゃぶりされるかもしれない、シャッフルユニットで「今度は俺が優勝する」という強い思いのためかもしれない。

芸人たちのお笑いに対する貪欲さは、これからもますます強くなるだろう。お客さんを笑顔をするために。100万ドル以上の価値がある、お客さんの笑顔を見るために。

-お笑い観覧記
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